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 前回は、ウイスキーと乙類焼酎、ふたつの蒸留酒の世界で活躍されているお二人に、それぞれの歴史的背景を中心にお話いただいた。今号では、それぞれの蒸留酒の未来への可能性と、酒の世界全体が抱える問題点などについて、鋭く切り込んだお話をうかがうことにしよう。

規制が作った焼酎の強さ
?たとえば麦焼酎を造る時に、麹ではなくて、ウイスキーのように麦芽にするということは考えられませんか。
鮫島 それは酒税法で規制されているので、できません。
?使った瞬間にウイスキーになってしまいますけれど、それを許されたらどうなるのでしょうか。
鮫島 許されたら、ウイスキーと焼酎の区別がなくなってしまうということですね。もしそうなったとしたら、当然やることになるでしょう。
 だけど、ある程度の制約が必要であると思うのは、ひとつは枠をはめることによってそのなかで技術開発とか商品開発とか、あるいは焼酎らしさとかがどんどん出てくるからです。
 昭和五〇年代の焼酎ブームが始まる前、始まったすぐ後は、焼酎業界のなかだけの争いだった。麦焼酎が伸びたら芋焼酎が影響を受けるとか、そういう時代でした。
 その次には種類間の争い。ビールが伸びたら焼酎が落ちるとか、赤ワインが出てきたら何かが落ちるとか、という状況が出てきた。そして現在は、酒のジャンルがなくなる時代になってきていると思います。すでにウイスキーメーカーもビールメーカーも、いろんなところに乗り込んでやっている。
 だからアルコール飲料としての酒そのものが、いろいろな変化に対抗できるような柔軟性とか対応性とかを持ち、時代とともにどう生き延びていけるか。そして、新しい社会や市場の変化に対応できる、柔軟性を持った業界かどうかというのが非常に大きいと思います。おそらく、焼酎が伸びてきた背景のひとつに、大きな理由としてそれがあったと思うんです。
 昔の麦焼酎は個性的なものだった。それを淡麗化するなかで、いまの麦焼酎みたいなのが出てくる。あるいは、冷酒ブームだった時には、冷やして飲める焼酎が出てくる。低濃度のものが出てくる。あるいは洋酒的なものも出てくる。そういうすき間すき間といいますか、新しい時代に即した商品開発を通じて焼酎業界は変わってきたわけです。それだけのものがいまの酒税法のなかで認められている。そういう酒は非常に少ないです。
 使える原料の幅がきわめて広い。造り方は比較的自由ですし、これを造りたいという目的があれば、それにチャレンジする技術とか原料を投入できるという世界だったのです。そのなかで焼酎というイメージを失わずに、あるいは少し変えながら全体としてのイメージを作り上げてきた。このように焼酎が認知されるに至るには、やはり酒税法上の背景、技術的な背景があると思う。それを取っ払ってしまったら、おかしくなってしまう。まだまだやれることはいっぱいあります。そういう意味で、飴玉はもらわないほうがいい(笑)。
 まずは自分たちの世界で、芽を出しはじめたのがいっぱいあるので、自分たちでルールを作って、きちんとその世界を守っていくというのが先ではないかと私は思っています。

ニューポット商品化の可能性
−ウイスキーのほうは逆にいうと、日本の酒税法ではこのようなものをウイスキーと言う、というように定義され決まっています。稲富さんは、日本のウイスキーとしての独自性とおっしゃいましたが、たとえば蒸留したてのウイスキーをニューポットで出すというような商品の可能性はどうなのでしょう。
鮫島 もうありますよ。ホワイトウイスキー。
−そうでしたね。それからどこかで、ライスウイスキーも出ていました。造り方はわかりませんが、たぶん麦芽を使って酵母で発酵させ、あとから米を投入したのでしょうか。飲んだ感じは焼酎だかウイスキーだか、不思議な印象でした。
稲富 日本の酒税法では、ウイスキーの定義のところで、貯蔵しなければいけないという規定はありません。ですから、昨日蒸留したものを、今日売ってもいいことはいいんですよ。ただ、従来のウイスキーカテゴリーのなかでメーカーも訴求したし、消費者にも期待されているのは、貯蔵熟成したフレーバーということですので、たぶんすべてのモルトウイスキー、グレーンウイスキーもごく一部を除いてみんな貯蔵されている。でも法令的には貯蔵しなくてもできることはできる。
 それから日本の法律は、スコッチもそうですけど、発芽した穀類で糖化をするということになっている。でも、もう少し一般的なアメリカやカナダの定義では、ウイスキーは別に麦芽を使わなくていいんですよ。天然の酵素で糖化をしなさいとなっているのは、たとえば、硫酸で糖化をしては駄目ですよ、という意味なんです。だから、穀類を麹で糖化して蒸留をして、それを木の樽で三年貯蔵すれば、ウイスキーになります。ですから逆に、焼酎は焼酎らしさをきちっと守っていかないといけない。海外の基準とどう整理をつけるかということは、けっこうややこしいですよ。
鮫島 カナダで麹で糖化したものを単式蒸留すると、日本へ持ってくれば本格焼酎なんですよね(笑)。ところがカナダ国内では、それはウイスキーとして売れる。認めたらしようがないけど、片一方でウイスキー、片一方では焼酎になってしまう(笑)。

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