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アメリカの日本食ブームとサケ

グローバル化時代の清酒原料調達システム

戦前期朝鮮半島における邦人酒造業の地域的展開と特質

メード・イン・ジャパンの酒の魅力づくり

台湾で広がる吟醸酒

日本酒の国際化

国際化時代の日本酒
酒論稿集
日本の酒の国際化
メード・イン・ジャパンの酒の魅力づくり
第一部 国際化の意義とチャンス
海外に進出する意義
 日本でつくられた酒の海外進出について考えます。二〇年先を想像するとメード・イン・ジャパンの酒を海外に広げていくことは、 とても重要なことだと思われるからです。
 日本の人口はいまおよそ一億二七四〇万人ですが、二〇年後には一億一九四〇万人(低位推計)と八〇〇万人も減ると見込まれてい ます。この時、六五歳以上の割合は二九%で現在よりもちょうど一〇ポイント高くなります(図表1)。家計調査によると六五歳を境 に酒類への支出金額がガクンと下がりますから、人口が少なくなるうえに酒にお金を使わない(使えない)人の割合が高まるというこ とになる。どんな新ジャンルの酒や消費シーンが登場するか予想できませんが、国内の酒類市場が縮小する確率はかなり高い。
市場規模が小さくなれば現在の日本の酒類産業は製造も流通も過剰になります。どこかで人や設備を削って縮小均衡させるか、ある いは新たな市場を開拓して人や設備を維持拡大するかという選択を迫られます。実際には国内市場という小さくなるパイを奪い合う競 争が中心になり、一方で一部が新しい市場の開拓・拡大に成功し、あるものは事業のあり方を転換し、敗れたり諦めた者が廃業すると いうことになるのでしょう。この新しい市場としたもののなかで、すでに目に見えているものが海外市場です。
国内市場のスケールダウンを補うという視角から海外市場の開拓が大切と言いましたが、実は質の面でも海外進出は重要な役割を果た します。そのひとつは、国内市場だけでは見えなかったことが、見えるようになるということです。当たり前すぎて気にとめなかった ものを、外国人が見て「すごい」と言うことがよくあります。外国に出て行くことで発見されるメード・イン・ジャパンの酒の魅力が あるということです。
もうひとつは、その魅力を価値に結びつけるための努力が国際的に展開されることで、総合的な意味での酒の品質が高まるというこ とです。ひとことで言えばブランド化ですが、それには品質向上の仕組みづくりが欠かせません。高いブランド力を維持しつづけるには、 良質な原料の調達とそのための環境投資の拡充、製造段階の技術や管理手法の向上、商品コンセプトの開発技術の進歩や優れた人材の 育成、価値伝達の手法や販売チャネルの適切化など、生産から最終消費に至るまでのすべてのプロセスをしっかり管理しなければなり ません。そうしなければ価格が高くても買っていただけるブランドにはならないからです。
何か遠い未来のことを話しているように聞こえるかもしれませんが、スーパードライが発売されてからもう一七年が経ちます。当時、 どん底だったアサヒビールは業界トップに登りつめました。清酒では、その頃はまだ吟醸酒という言葉も市場もごく限られたものでし た。メード・イン・ジャパンの酒が、二〇年後に海外でブランドを確立し高い評価を得ていることは、十分にありえることです。

輸入量は輸出の六・六倍
酒類の輸出入の状況を見てみましょう(図表2)。二〇〇二年に輸出された酒類は五万八二〇〇sで、その七割がビールです。一方、 輸入は三七万八〇〇〇リットル。ワインが一六万八〇〇〇リットルで四四%を占めます。ついで焼酎が二割、ウイスキー類とビールがそれぞれ七% と続きます。日本の酒類は輸入が輸出の六・六倍もあり大幅な輸入超過となっています。
どうしてこれほど大きな差があるのでしょうか。日本でつくられ、飲まれている酒の品質は、外国のものに勝るとも劣ることはあり ません。かつてビールやウイスキーやワインなどの洋酒では、ドイツ産やスコットランド産やフランス産のものよりも劣っていたと思 いますが、現在は相当に差が縮まって日本産のほうが優れているものがごろごろあります。とすると、すでに世界中に広がっている欧 米生まれの酒類では、競争のマーケティングをどのように展開するかが鍵になります。すでに、本家本元を自負する商品が市場を握っ ているなかで、市場を獲りに行くのですから容易なことではありませんが、けっしてできないことではないでしょう。いわゆる差別化 の三要素、「商品」「価格」「付帯サービス」のいずれかの点で明確に差異を示すことができれば、相応に市場が獲れるはずです。
にもかかわらず、これまで輸出が無かったのは、あえて海外に出て行く必要がなかったからです。国内市場があらゆる意味で十分に 魅力的であった。骨の折れる海外へ出て行って売る必要などなかったからです。
事情が異なるのは基本的に海外に市場がないものです。清酒、本格焼酎、チューハイ、梅酒など日本オリジナルの酒です。これらは 海外では異質な酒です。味に馴染みもなければ、どんな時に、どのように飲むのかも知りません。少しずつ慣れて好きになってもらう ことが必要な酒です。
このふたつのタイプの酒の海外展開について、それぞれに検討する必要がありますが、今回は後者に焦点を合わせます。また、国際 化では原料調達や海外での製造も大きなテーマとなりますが、それにも触れません。

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