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グローバル化時代の清酒原料調達システム

 清酒産業は、主原料のほとんどが国産によって成立している産業である。しかし日本の農業は、これまでの減反と保護政策によって自立性の乏しい産業になっている。そこで米作りとの連携、原料調達など、清酒産業の足元を考え直してみたい。

清酒原料米が抱える構造問題
 日本の国内農業は高コスト体質を抱えており、ほとんどが政府の補助抜きには存在し得ない状態になっている。冷凍技術の発達により、関税などによる障壁がなければ、葉物野菜に至るまで中国などからの輸入品に凌駕されてしまう日が来るのも近いとされる。実際に生姜は、中国に大型農園と冷凍倉庫が建設され、日本の相場状況を見ながら利益の取れる状況下では大量投入されている。ユーザーから見れば価格が安定してありがたいことであるが、高知県を中心とする生産農家では、相場変動を見越して数年単位で採算を取る経営計画を立てているので、相場上昇局面がなくなると新規設備投資ができず、早晩苦境に追い込まれると言われている。
 この流れのなかで、主食たる米もミニマムアクセスから関税制に切り替わっている。現在は海外品と国内産米では食味に差があるが、いずれ日本人の食味にあった米が大量に安価で輸入される日が来ることは想像に難くない。現在の稲作農家のほとんどが、補助金を除くと採算割れに近いこともこのシナリオの実現性を高める一因になっている。
 日本酒は、主原料を一〇〇%国産でまかなうという特殊な基盤に立っている。他の酒類や米加工産業のなかでも稀有な例である。
 原材料の米と一口に言っても、酒造好適米のなかで最高値の兵庫県特A地区産山田錦から、酒米(飯用米転用)、加工用米、特定米穀(加工用クズ米等)までさまざまなランクの米がある。本来いちばん考えなければいけないのは使用量の多い飯米(酒米)の価格であろう。なぜならば、山田錦をはじめとする酒造好適米は、生産適地もそう多くなく、原価の高さを商品価格で吸収することが可能であるからだ。飯米は、そこまでの差別化は難しいが食用との競合で、蔵元側から見れば高い価格になっている。
 清酒の大衆酒の価格は、他酒類と競合しているなかでの値頃感を考えれば、まず上昇していくとは考えにくい。したがって、このまま放置しておけば清酒の市場自体がますます縮小していくか、輸入の低価格原料を使用していくかのどちらかを選ばざるを得なくなる。輸入米を使ったものをはたして日本酒と呼べるのかという議論は別にして、近い将来にはそうなる可能性が高いということを農家・蔵元・行政当局は視野に入れていく必要はあるだろう。
 次項では、新潟の朝日酒造が農業生産法人を設立して取り組んでいる地元産酒造好適米の契約栽培事例と、山形県で進められているオリジナル酒造好適米の開発と商品化の事例、そして最後に、農家との契約栽培を大規模に古くから進めているトマトジュースのカゴメの事例を紹介する。まだ解決策の見えてこない清酒と米の問題であるが、蔵元・農家双方が協力しあって、コストダウンと価値の開発を進めていくためのヒントが見つかればよいと考えている。

農業生産法人で栽培研究をおこなう朝日酒造
 新潟県最大手清酒メーカー朝日酒造が位置する新潟県越路町は、コシヒカリの最上位ブランドである魚沼産コシヒカリの生産地域のすぐ隣りである。蔵の周囲は一面の水田であるが、この田圃で反あたり最大の収入を得ようと思えば当然ながらコシヒカリの生産をおこなうこととなる。このことは普通に考えると、地元米での酒づくりを実現するためには不利な条件となる。しかし、現在では地元主体の契約栽培農家による五百万石をはじめ、かなりの数量を地元から調達している。高級飯米の大産地で酒造好適米の契約栽培を着々と拡大させていく朝日酒造は、これまでどのように取り組んできたのであろうか。そのヒントは同社を取り囲んでいる農業生産法人「あさひ農研」の水田に立っている「朝日酒造酒米実験田」という立て札にある。
 朝日酒造では、酒づくりは米作りからという考えのもとで米作りへの関係を年々深めていった。それも単に契約栽培でよい米を確保しようというのではなく、よい酒、よい米を産み出すための環境整備から取り組んでいるという点が異色である。その哲学を考えれば、同社の契約栽培農家が地元中心となっていることも理解しやすいはずだ。


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