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酒造メーカーと農業の新たな提携条件
課題は何か
 フードシステムの視点から見ると、食品メーカー、量販店、卸売会社の三者関係は小売主導型流通システムの形成によって大きな転 換を遂げつつある。この転換は、農業にも波及するのは必然的であって、食品メーカー、外食企業、量販店との提携関係を模索するこ とは、日本農業の再編の戦略でもある。
 高齢化・過疎化によって地域農業の生産力が減退してくることは、特に国内資源への依存度の高い食品メーカー、外食企業にとって 深刻な問題であり、いかに産地との提携関係から担い手を育成するかという課題を持っている企業も多い。食品メーカー、外食企業共 に輸入原料・食材との棲み分けを図りながら、生産を統合化したいという戦略は、生産側の戦略と重なる領域が多く、両者は提携関係に 入ることになる。この提携は継続的取引の段階にとどまらず、両者が経営資源を共有するという関係でパートナーシップを確認せねば ならない。
 これまでも食品会社と生産者の関係は支配関係を持って論じられてきたが、共通の目的を持ってパートナーシップの関係を構築する ことが両者の利益になるだけでなく、効率的な生産・流通システムを形成することになるであろう。食品メーカー、外食企業などとの 契約関係にある生産者の販売金額が二〇〇〇万円を超える事例が多くなり、新たな担い手が形成されつつあると言っても良い。また、 生産者のネットワーク化は農協・経済連を越えて全国的に形成されるようになり、交渉力を持つようになった。これまでのような農協 組織に限定されず、農業と食品産業との多様な提携関係が形成されつつあるといえる。
 多くの食品メーカーが農業との提携を模索しているのに対して、酒造メーカーは原料問題だけからみた農業にとどまっている。その 理由は食糧法という規制や、農水省と大蔵省との行政監督上の違いに帰すこともできる。広島では酒米の県内自給率が極めて高いにも かかわらず、酒造メーカーと生産者の顔は同じ県内にあっても見えないという関係がつづいた。
 農業は農村という豊富な自然・文化の資源と空間を伴ってきた。特に酒造好適米の産地は温度管理や集約的な管理のために、条件は 悪いが、景観も含めて資源豊富な中山間地に立地してきた。つまり、平坦部で圃場整備され、機械化された稲作経営と異なって、この 中山間地の酒造好適米には中山間地というバックグランドがあり、伝統的生産システムが残されている。このような景観、文化、水な どの農村の資源がコメを媒介として酒文化を構成すべきであろう。清酒が伝統的産業であると同様に酒米の産地も伝統的な生産システ ムと農村の「原風景」を維持してきたといえよう。
 ここでは食品メーカーと農業との提携条件、新食糧法下での酒造メーカーと農業との契約生産による提携関係の形成について事例分析 を踏まえながら課題に接近する。

食品メーカーとの提携条件
 国内資源に原料を依存せざるを得ない食品メーカーにとって農業生産力の減退は決定的であり、機械化や大規模生産の育成、フィー ルドサービスの充実による高品質生産のための契約生産のシステムが模索されている。食品メーカーにとっては輸入原料と国産との棲 み分け、国内生産については生産者の所得を補償しようとする行動も見られ、生産者のインセンティブが高まるようにあえて面積契約 を取る場合もある。これまで面積契約はタバコ、ホップ、果汁用トマトに限定され、多くの契約生産は数量契約であって、リスクを生 産者とメーカーが分担する方式、あるいは市場の価格変化に強く影響された販売契約の方式を取る場合が多い。多くの契約方式はメー カーのリスクを軽減する形で、面積契約から数量契約、さらに販売契約へという転換も見られ、生産側も複数の流通チャネルの管理が 課題となった。
 最近における食品メーカーは農業生産に入っており、直営農場を所有したり、農業生産法人の育成、収穫作業の受託などの展開を遂 げている。
 青果物では収穫作業の機械化で省力化が達成できるようになったことや契約生産による取引価格の安定化の志向が強まったことによ って、食品メーカーと農業側とのパートナーシップによる提携の可能性が強くなった。例えば、カルビーは都府県でも機械化で規模拡 大を促進しながら品質管理を徹底し、「カルビーファーム」を育成しようとしている。この場合、面積契約にこだわって生産側の誘因 を拡大することによって生産力を向上させ、リスクは食品メーカーが負担し、生産者側にプレミアムを支払う方式を取っている。いわ ば、加工の利益の一部を農業側に所得移転させることによって食品メーカーが農業支援をすることである。

酒造メーカーと産地との提携関係

一 酒造好適米の拡大
 新食糧法以前から級別制の廃止もひとつの契機になって高級酒の需要が拡大し、地酒をブランドイメージにした中小酒造メーカーの 統合化戦略が差別化行動となり、市場細分化がさらに進展している。この高級化の方向は、本醸造酒、純米酒、吟醸酒、純米大吟醸酒の 順であり、掛米にも酒造好適米を使用し、高級化するほど精米歩合を低下させるので、酒造好適米の需要拡大になった。従来から酒造 好適米は過剰になると食用としての処分ができないため、供給量を抑制する政策的配慮がなされ、県によっては集落レベルまで作付面 積の分担があって自由な規模拡大や品種選択が制約を受けた。また、酒造好適米の価格形成には全農が調整しながらも県酒造組合連合 会との交渉により、山田錦(兵庫)、雄町(岡山)の価格水準が高位になる。特に山田錦は立地条件にもかかわらず中山間地での高 齢化した小規模経営が担い手であるため出荷量の大きな増加が期待できない。
 酒米でも安定的に高品質の原料を確保しようとすれば、酒造メーカーは産地との契約関係に入ろうとする。歴史的には兵庫県旧産地 では灘の大手メーカーを中心に村米制度が慣習的に形成され、品質改善の効果をともなっていた。

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