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中上級市場の低迷は売場に課題?
 昨秋、本誌「酒屋放談」で酒類の中上級市場をテーマに取り上げた。中上級市場に活性化の兆しがあるのか、活性化しつつあるなら ばそれはどのように買われているのかという観点から、ご意見を頂戴した。紙面の制限もあり十分な検討ができなかったため、今回、 あらためて取り上げる。
 「酒屋放談」では参考情報として根本重之氏(拓殖大学教授)の論考(二〇〇二年五月三一日・日本経済新聞)を提供した。その要 旨は次のようなものだ。
 日本の消費市場は三つに層化が進みつつあり、低位の市場では供給過剰が生じる一方、高位の市場は供給過少が生じている。最大の消費財である 食料品を例にすると、高位の市場はデパートの地下食品売場の人気に見るように活性化している。 中位の市場もクイーンズ伊勢丹などの高級スーパーが繁盛している。そして中位の市場規模は高位のそれより格段に大きい。低位の市場は、層化し た市場に対して従来のままの一律的なアプローチを続けたために供給過剰となった。消費が飽和する中でメーカーも流通も既存品の値下げ競争をお こないデフレを進行させた。高位・中位の市場開発に焦点を合わせることが、景気浮上のためのミクロ政策として有効である。
 この論考を酒類市場に当てはめた時、多くは首をかしげたようだ。確かに低位の市場は酒類でもその通りだ。ビールから発泡酒へシ フトさせたうえ値下げまでした。ワインも清酒もそれなりの品質の低価格品ばかり投入されてきた。焼酎だって甲類はすさまじい価格 の下がりようだ。けれども、高位・中位の市場が活性化しているという感じはないぞ。それどころか酒類は高位・中位の市場も供給過 剰じゃあないか。商品はたくさんあるが売れ行きがいいわけではない。
 お寄せいただいたメッセージにはそうした指摘が多く、その理由として売場や買い方に 着目したものが多くあった。代表的なものをあらためて紹介しよう。
「中上級商品は需要も供給もありながらうまく噛み合っていない。これを変えられるか否かは中小小売業にかかっていると思う」谷塚秀幸・酒販店 「(中上級市場は)業務用ではすでに形成されているが、一般向けでは酒売場の専門化が広く現れて初めて形成される」植手茂・清酒メーカー 「中上級の酒は迷宮のような複雑さ。振り向かせるきっかけが不足している」西島俊裕・酒販店
「中上級商品が好調といっても(買い方は)最寄り 型ではない。ただ専門型とは言える」西尾和浩・酒販店売場あるいは売り方が問題であるという主旨のことは、セブンイレブンジャパン会長の 鈴木敏文氏も指摘している。鈴木氏は、お客さんが商品を手に取るかどうかは「購買商品の有無」よりも店の「信頼性や販売体制」に よって決まることが多々あるため、店が買う気を起こさせる体制になっているかどうかが非常に重要になってきているという。そして、 背景には本当に必要で買う商品はほとんどなくなったから、消費者の心理が購買に影響するウエイトが大きくなったとする(二〇〇三 年一月九日・日本経済新聞)。
 なお、根本氏が例示した現象が高位・中位の商品の人気を示すものなのか、それともそうした売場の人気を示すものなのかという議 論はしない。それらは一対のものと考え、酒類が下位の市場で供給過剰に陥り、高位・中位の市場が活性化していないメカニズムを探 ることに焦点を合わせる。

消費低迷と貯蓄増
 酒類市場の消費を検討する前に、現在の消費低迷がどのように説明されているのかおさらいしておこう。
 ここ数年、長引く不況について消費の側からのアプローチが活発におこなわれている。
 従来は供給する側に原因を求める議論がほとんどであった。規制が企業の活発な活動を阻害しているためであるとか、不良債権が企 業の活力をそいでいるから経済活動が停滞するなどだ。だから景気を上向かせるには構造 改革と雇用の流動化、そして不良債権処理を迅速に進めることが必要だとして推進されて きた。その一方で二〇〇〇年頃から消費に関心を向ける見方が出始めた。従来は景気が低迷して企業の投資意欲が冷えても、生活に必 要なお金は使わざるを得ないから消費はすぐに停滞せず景気を下支えした。オイルショックなど以前の不況時にはその通りになった。 ところが今回は消費が停滞し、いっこうに景気を下支えしない。減税や公共投資を繰り返して景気を刺激しても反応がない。これが消 費不況である。
 因として心理的な不安が指摘されている。リストラや終身雇用制の見直しによる雇用不安、年功賃金制から実力主義への転換による 賃金不安、年金制度の崩壊や少子高齢化社会の見通しの不透明さなどの将来不安、株価や地価の下落による資産不安、災害やテロまた 相次ぐ有名企業の不正などから生じた社会不安、これらが消費意欲を冷え込ませ、人々は貯蓄に励む。利息がほとんどつかないにもか かわらず、将来の生活の蓄えやいざという時の備えから流動性の高い貯蓄にカネが回る。その結果、二〇〇〇年の家計預貯金残高は七 一八兆円(日銀「資金循環勘定」)に膨らんだ。バブル経済のピークに近い一九九〇年の一・五倍強であり、中国の国内総生産の約六 倍に相当する。

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