時代や文化とリンクしたお酒に関する旬の情報サイト
酒文化研究所ホームページ
会社概要酒文化の会メールマガジンContact UsTOP
イベント情報酒と文化コラム酒文研おすすめのお店酒文化論稿集酒飲みのミカタ特ダネ
海外の酒めぐり日本各地の酒文化見学できる工場・ミュージアム酒のデータボックスアジア酒街道を行くリンク集

 
<論稿集トップへ

食と酒におけるイタリーメイドの世界戦略

女性は酒をどう選ぶ

「とりあえずビール」衰退の背景

一〇年後の酒市場 何が増えて何が減る

オープン価格化で
  あなたの仕事はどう変わる?


デフレ時代の
  ハイクラス活性化戦略


本格焼酎の産地呼称
  を考える


機能分化する酒類販売

広告規制と酒類
  マーケティングの将来


酒造メーカーと農業
 の新たな提携条件


灘五郷の伝統と革新
酒論稿集
酒と健康
食と酒におけるイタリーメイドの世界戦略
世界に広がったスローフード運動
写真1 日本でスローフードという言葉が注目されるようになったのは、新世紀を迎えようとしていた2000年頃のことです。1986年にイタリアで誕生したスローフード運動は、グルメたちによるアンチ・ファーストフード運動という性格を強く帯びていました。その主張はファーストフードを象徴的に扱いながら、効率優先で画1的な大量生産と、それを享受することで成立している、時間に追われるライフスタイルを批判しました。そして、具体的な取り組みの第1歩として、ゆっくりおいしい食事をすることを提案したのです。
 このメッセージは広く受け入れられ、急速に拡大していきます。18年を経た今では世界中(45カ国)に支部があり、会員数はおよそ8万人にのぼっています。内訳はイタリアが半分を占め、次いでアメリカ合衆国が16%、ドイツ11%、以下スイス、フランスと続きます。日本は6番目で32の支部があり、2200人の会員がいます(2003年10月時点・ニッポン東京スローフード協会資料より)。
写真2 活動の基本方針は、(1)消えつつある郷土料理や質の高い小生産の食品を守ること (2)質の高い素材を提供してくれる小生産者を守っていくこと (3)子供達を含めた消費者全体に味の教育を進めていくこと の3つです。
 具体的には、食文化に関する出版活動、この主旨に沿った成果をあげている方の表彰、伝承が危うい食材や食文化の保護活動、味覚教育(イタリアでは2004年に「美食の科学の専門大学」が設立された)、さまざまな食イベントの開催 などが進められています。
 そして、2004年10月には2年に1度おこなわれる最大のイベント「サローネ・デル・グースト」が開催されました。これは運動を推進するスローフード協会と、開催地イタリアのピエモンテ州の共催です。大手加工食品メーカーやキッチン家電メーカーも、オフィシャル・スポンサーとして名を連ねています。今回は過去最高の14万人を超える人々が来場し、そのうち3割を外国人が占め、国籍は30以上におよびました。

対象は素材から環境・社会へ
写真3,4 サローネ・デル・グーストは毎回テーマを掲げます。2000年が「インデヴィジュアリティ(個性)」で、2002年は「ナレッジ(知識)」でした。5回目となる今回は「フード・コミュニティ(食品を育む環境)」です。
 近年、スローフード運動は、「エコ・ガストロノミー(環境に配慮する美食学)」という考えを打ち出しており、今回のテーマにはそれが強く反映されています。美食によい食材は欠かせませんが、それは「自然環境」と「栽培・加工・商業・調理する人々」という2つの要素が揃って初めて成立します。食材の栽培に適した自然環境の保全と、おいしい食卓を支える人々の労働及び生活環境を、好ましい形で維持・発展させていくことが、美食を継続させます。エコ・ガストロノミーは、このように美食に環境問題の視点を持ち込み、美食の社会性を高めるものと言ってよいでしょう。
 今回のフード・コミュニティというテーマは、エコ・ガストロノミーの言う、よい食材のための2大要素(素材の栽培環境と加工・商業・調理に係わる人々の労働条件と生活環境)を包括するものでしょう。そして、これまで生産者に偏っていた運動の対象を、商業など周辺にも範囲を拡大した点は、新しい動きです。

「市場」感覚の試食・即売会
写真5 スローフード運動の堅めの理念とは裏腹に、試食・即売会場は雑然とした活気に溢れ、とても庶民的です。日本円で2000円〜3000円という入場料(1日券)にもかかわらず、開館前から大勢の人が押しかけ、両手いっぱいに買い物袋をぶらさげて帰ります。日本国内でも魚市場に立ち寄るバスツアーがありますが、お客様に「買いたい」という気持ちが溢れているところは、感じがよく似ています。
 試食や試飲は無料のものがたくさんありますが、「おっ!これは」と思うようなものには有料のものが多くあります。「ほんもののエール」だというビールは1パイント(約500ml)で550円、フォッカチャという伝統的素焼きパンや4種類のチーズの盛り合わせ試食セットは、どちらも300円です。とりたてて安いというわけではありません。
 ただ、雰囲気はとても楽しいものです。チーズ、生ハム、ワイン、オリーブオイル、ビール、フルーツ、ナッツ、牡蠣、リキュール、ハーブなど、専門店が競うように店を出し、サンプルを用意して、商品を説明しながら、自社の商品をアピールします。ここに並ぶ品物は間違いないものと思えば、ついつい買ってしまいます。

<<前頁へ      次頁へ>>