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変わる食卓・消えた晩酌
変わる家族・変わる食卓 この春に発行された『変わる家族 変わる食卓』(勁草書房刊)が注目を集めている。家庭の食事の実態を浮き彫りにしたもので、5年間にわたり延べ2000食卓を超える膨大な事例研究を積み重ねた労作である。今回は、著者の岩村暢子さんに食卓の変化とそこから垣間見える意識の変化をお話いただき、酒への影響を考える。

食べることより遊ぶこと
−調査の対象を1960年生まれ以降の主婦の世帯とした理由は、この時期を境に食に限らず価値観や行動が大きく違うことでしたが、その食に関して言うとそれはどのような違いなのでしょうか?
岩村 衣食住遊のなかで食がいちばん下に来ることが大きな特徴です。そして、食事作りは「しなければならない」ものではなく、気分次第で「作っても作らなくてもいい」ものになってしまった。
 家庭の主婦が、食費を削ってディズニーランドに遊びに行って楽しかったと喜んで語ります。遊んだり、好きな物を買うために、家族4人の夕飯を残り物の野菜と特売のもやし炒め、納豆、ちくわの炒め物だけという節約メニューになったりするが、それはゲーム感覚にも似ている。
 忙しくてできなかったからと、スーパーで買った惣菜を夕食に出した主婦の話をよく聞いてみると、友達の家でおしゃべりをしていて帰りが遅くなったとか、習い事や買い物に行っていた、など。絶対的時間がないのではなく、他のしたいこと、しなければならないことを優先して、結果として食事作りの時間がなくなっている。
 ケーキや煮込み料理を手作りする時も、「お菓子作りは楽しいから」とか「手作りする気分だったので」とか、手作りするのは気分や気持ちの問題だと捉える傾向が強く見られます。みんなが揃うからご馳走を作るとか「食事は作らなければならないもの」という意識が低くなっているんです。
 最近は食についても健康志向、本格志向、手作り志向と言われます。けれどもそれらを考える上でも、食の地位の相対的下落と、気分しだいの食事作りであることを前提に理解しておかないと、読み違えることになります。

家庭科教育が生んだ断層
−1960年生まれはいま、43歳ですか。もう少し若いところにも断層があると述べていました?
岩村 若くなるにつれて食を軽視する傾向は強くなりますが、34、5歳くらい(1970年前後生まれ)のところにもうひとつの断層が確認できます。43歳から30代半ばくらいまでの主婦は、栄養・機能志向が強くて食材を栄養機能に還元して考えるような傾向があります。それで時々、チグハグな取り合わせのメニューにしたり、栄養素重視でなんでも放り込んだような配合飼料型の料理を作ったりする。加工食品を活用して調理に余計な手間暇をかけず、合理的にしたいという意識も強い。
 ところが34歳くらいから下になると、調理の技術や知識が、その上の層に比べみても低くなっている。食への関心も下がっている。栄養についても、網羅することより、身体にいいといわれる一品を、必ずしもバランスのよくない食卓に一品加えることで一気に相殺しようとするような感覚がみられます。 
 この断層は調査を重ねるごとに1歳ずつ上に上がってきています。
−というと世代の違いでしょうか。団塊ジュニアといわれる世代に近いですが。
岩村 この断層はふつうのマーケティングの常識では捉えられないものでした。私たちは、所得や出身地、家族構成、学歴、職業、子供の年齢などいろいろな切り口でこの断層を捉らえようとしたのですが、もちろん原因はひとつではないと思います。さまざまなことが重なりあって今日のこの状況になっていると思います。そして、家庭科教育でさえ、その例外ではないということがわかったんです。
−家庭科ですか?
岩村 ええ。中学校で家庭科が男女共修になったのがちょうどこの年齢層からでした。
−男女共修になって、そんなに大きくカリキュラムが変わったのですか?
岩村 内容が変更され、調理実習の時間も削減されます。そして男子も楽しく作れるクッキーやデザート作りなどが増えています。男女共修になったことで、家庭の日常の食事を管理し賄う人への教育というより、食を自己管理できる人の育成教育に、より傾いてきたように見受けられます。しかも、簡単に、楽しく、合理的にということです。
−それ以前はどんな内容でしたか?
岩村 1960年生まれ以降の人が受けた家庭科教育は、ひとことで言えば消費者教育が中心でした。それ以前が「技術教育」寄りだったことと対比すれば、生産、製造されたものの選択、消費、活用の教育です。表示の見方を知るなど食品や食材の選び方から始まって、それをいかに合理的に活用するかにウエイトが置かれていたと言っていいでしょう。
−そう聞いて、小学校の家庭科でJASマークとか勉強したことを思い出しました
岩村 家事に限ったことではないですが、それ以前は経済、社会の状況からいっても「作り手」「生産者」の「技術教育」が重視されていました。そこから、経済成長を経て「消費者」寄りに変わってきたわけですね。

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