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おいしいカクテルをお出しするために-<strong>岸</strong> 久(スタア・バー店主)
 バーテンダーは酒の料理人であり、酒をおいしく飲ませるサービスのエキスパートである。酒を材料として、その個性を生かしつつ、複数を組み合わせて新しいおいしさをつくる。今回は世界的なバーテンダーである岸久氏に、「酒の『おいしさ』を提供すること」をテーマにお話をうかがった。

 インタビューは、岸さんが経営するスタア・バー(東京・銀座)で金曜日の一六時三〇分からおこなった。約束の五分ほど前にお邪魔すると、若い数人のバーマンたちが開店準備を進めていた。
開店前にもかかわらず、私が店入りすると、お客様を迎えるタイミングで節度ある挨拶の声が響く。仕事を中断して、「お待ちしておりました。ご取材の件、うかがっております」と、椅子を勧めてくれる。
  ほどなく岸久さんが出勤してきた。店の雰囲気がそれまでとはっきりと変わる。緊張感の度合いが数段階、グンとあがるのを感じる。岸さんは、即座に、気になったことをスタッフに確認。店がいつもと違う点を一瞬のうちに見つけ出し、ひとつひとつチェックしていく。要点がわかると、相手の話が終わる前に、次の質問をバンバンバンと浴びせていく。

お酒の味覚 食事の味覚
 失礼しました。インタビューでしたね。最初にテーマと時間を確認させてください。話を聞きたいと言って取材にいらっしゃって、いきなり大掛かりな機材を持ち込んで写真を撮ろうとする方や、延々と時間を伸ばす方もあるので……。こう言うと難しい人だとか、うるさい人だとか言われるのですが、お客様をお迎えする準備は分刻みで詰まっているものですから。
 いえ、お引き受けしたことですからその時間で、きちんとお話するのは当然ですし、いいお話ができるように努力したいと思っています。ですが、取材が終わると「いい時間ですし、せっかくですから一杯いただいてもいいですか」とズルズルと流れようとする方も多いんです。そういうのは大嫌いでして、気持ちよくお話してきたのに、それまでの関係をぐずぐずにしてしまうような振る舞いは。
『スタア・バーへ、ようこそ』2004年・文芸春秋刊― 立場と距離感はきちんとしておかなければいけませんね。今日は、小一時間ほどお時間をいただいて、カクテルのおいしさをどう見つけていくのかについて、お聞きしたいと思っています。
 ご著書(『スタア・バーへ、ようこそ』文芸春秋刊)を拝読しますと、理想のカクテルのおいしさをイメージして、そこに近づく工夫を積み重ねていらっしゃることを強く感じます。そこで最初の出発点となる、おいしさのイメージをどうやって固めていらっしゃるのかをお聞かせいただけませんでしょうか。

 おいしさの感じ方は個人差がありますし、ひと言で言えば経験ということになってしまいます。
  酒のおいしさは、子供の頃から身につけてきた味覚から離れています。初めてビールを飲んで、それまでの味覚では「おいしい」とは思えない。体験を積み重ねて、新たに酒の味覚を磨いていくことになります。
味覚には先入観も強く影響します。グレープフルーツなど柑橘類のフレッシュジュースと濃縮果汁を還元したジュースを、事前に何も情報を与えないで飲み比べさせると、フレッシュのほうをおいしいと言う人は多くないかもしれません。フレッシュは水っぽいですから。でも、一方が「フレッシュだ」と聞くと、多くの人がそっちをおいしいと思ってしまいます。
 酒のおいしさの感じ方は、たいへん微妙です。それを言葉で表現するのは難しい、不可能でしょう。

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