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  ひげ徳利


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酒論稿集
酒器論稿
日本酒のうつわ No.2
と書いて盃。皿のように見えるが皿ではないという意味なのだろう。
盃の中でも、浅いのを特に平盃(ひらはい)と呼ぶ。皿より深めだからといっても、皿には深皿というのもあって、その区別はなかなか難しい。
感じとしては、平盃はシャープで皿は鈍重と言えないこともないが、これにも例外があって簡単にこうと決めつけるわけにもいかない。
抹茶の茶碗もそうなのだが、形や寸法だけでは茶碗とは言えない様に、盃も、姿形や寸法では計れないなにか酒の感じといったものが無ければいけない。しかし、この「酒感」なるもの、人それぞれに違うだろうから、個々の、それこそ主観に任せるしか無いのだろう。
ギャラリーやデパートの陶芸コーナーを時々覗いて見るが、平盃はあまり出てないようだし、これで一杯飲りたいと思う様な平盃には、滅多にお目にかかれない。そう、いささか陶芸をやってる身からすると、平盃は、なかなか酒の感じがこないもので、盃の中では最も作りにくいものなのだろうか。さほど酒好きでない作家の酒器は、すぐに見分けがつく。酒器の形や寸法がそれらしいだけで、どこか酒感といったものがない。反対に酒好きの作った盃は、形が酒器らしくなくても、酒以外には考えられないといった趣きが、器から発散してくるのである。
古いやきものの盃の多くは、もともとは酒器として作られたものでは無くて、後世の酒好き達がそこに酒を感じ、取り上げ伝えられてきたもので、平盃の多くは見込みの中央が平らではなくやや凹んでいる、という器が盃として選ばれ残されてきた。
あとは、唇の触れる口縁の部分が、皿と盃とでは微妙に違うところだが、そんなことより、これで酒を飲んだらさぞ旨かろうと、思わずノドがゴクリ鳴る様な、そんな器が盃と呼ぶにふさわしい。

平盃は、寸法によって飲み方も変わる。小さめの盃には並々と注ぎ、その盃の両端を人差し指と親指とではさんでちょっと持ち上げ、落語のように唇を突き出しつつ口の方から出迎える。酒と出会うまでのその間の取り方によって、そのつど、飲みっぷりに変化がついて、そんなところが酒呑みにとっては嬉しいものだ。卓上に画集でも開きながら、チビリチビリと酒の香りをも楽しみつつ飲るのには、小振りの平盃が最もふさわしい。
大きめの平盃の場合は、卓上にではなくて、床に直かに盆でも置いて、なみなみとではなく一口で飲み干す程の量を注ぐ。そして、つと盃の向こうに腕をのばし、内側に親指と人差し指の横腹とでつまみあげて、グイッと手前に傾け一気にあおると、夏の、気宇壮大な気分が身体中に漲ってくる。
茶の湯の方でも、平茶碗というのがあって、別名、夏茶碗とも呼ばれるように、平盃も、夏の酒器として愛用される。その、広い見込みを満たした酒の表面を、サッと風が通り抜ける様な、そんな清涼感が夏の開放的な気分にはピッタリくるのである。

月刊酒文化 2004年 9月

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