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銀の酒器

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酒論稿集
酒器論稿
銀の酒器
 250年程前に英国で作られた銀のマグを手にしてビールを楽しむ。ほんの一瞬、想いは、英国のカントリーにたたずむマナーハウスへと飛んでいく。骨董銀器を使うという遊びには、そんな楽しみがあります。

 お酒のプロである本誌の読者といえども、こんなに古い銀のマグを使っているという方は、数少ないでしょう。なにも陶磁器とガラス器ばかりが酒器ではありません。静かな輝きと、柔らかな手触り。古い銀器にも、興味深い酒器の数々が存在しています。わが国で銀の酒器と言えば、杯やちろりが思い浮かぶくらいでしょうか。それにひきかえ、西欧の貴族階級の食卓において銀製の酒器は、古来多様な展開を見せてきました。今回は、一般にあまり知られるところのない、銀の酒器とその背景について、少しお話してみましょう。

 西欧の骨董銀器の世界に現れる酒器は、その酒文化を反映して、主としてワイン、ビール、そして、リキュールのために造られた品々が中心です。銀の酒器の歴史は古く、さかのぼれば、古代地中海文明の源にまでたどり着きます。
 古い時代であればあるほど、銀は稀少で高価な貴金属でした。従って、酒器に限らず銀器は一般に、庶民の食卓とは無縁の存在でした。銀器は、富と権力を象徴する重要な道具の一つとして、とくに中世以降、西欧貴族の食卓を飾ってきたということができます。
 ここでいう「貴族」とは、日本の平安宮廷貴族のような女性的でひたすら優美なお公家さんではありません。むしろ戦う騎士集団でありまた、所領を治める領主としての色彩が濃い、武士的な貴族達なのであって、銀器の造形や装飾にそうした力強さが反映されていることは注目されていいと思います。
 私は銀器を専門とする骨董商です。ここではまず、私の手許にある品々を中心として、そんな世界の一端を覗いてみることにしましょう。

【マグ】
  持ち手があり普通は蓋のない大ぶりのカップをマグと呼びます。本来ビールを飲むために造られたと考えられています。その語源はどうやら北欧にあるようです。英国は11世紀の中頃に北欧人であるノルマン王朝の支配下に入ります。ノルマンが英国に持ち込んだ文化は、建築や言葉や法制度など、様々な形で英国文化の基層の大きな部分を形作っています。ノルマン=ヴァイキングたちの、銀器に対する執着には大変なものがあり、中世以降現代に至る「英国人」の銀器好きという性質が、北欧の文化から多大の影響を受けていることは間違いありません。
 銀製のマグは、高さ10cm内外のものが一般的で、上の写真の品のように、凝った植物文様が施された品も少なくありません。なお、この品は1748年のロンドン製です。
 銀のマグを冷蔵庫で充分に冷やしておいて、そこに室温のビールを注いで飲む。日本ではちょっと考えられない、英国流の味わい方の一つです。

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