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日本酒のうつわ No.1
 
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酒論稿集
酒器論稿
日本酒のうつわ No.6
 鎌倉の御成通りに、カメ入りの紹興酒を店先に持ち出し、目の前で封を切って量り売りをするので評判の酒屋があって、新しいカメを空ける時は観光客の輪で盛り上がる。カメの側面に大きく紹興加飯酒(かぁはんしゅ)。紹興花彫酒というのもあるが使う米の量が多いのを加飯と表示する。とは、店主からの受け売りなのだが・・・。
 酒が漏れた際に、滲み出したのが分かるようにと、白い石膏で固められた口をカナヅチとノミで叩き割ると、先ず、竹の皮三枚を竹ひごで止めてあって、それをはずすと、素焼きした皿状の蓋が現れる。
 さらに、その下を三枚の紙で覆ってあって、次々と蓋を取り除いていくパフォーマンスは、大道芸を見るかの如くである。最後の蓮の葉(殺菌力がある)が外されると、紹興酒の芳醇な香りが辺りに漂って、見物の輪から思わず歓声が上がる。
 ここ三年程前になるだろうか、古美術店の店先に、古信楽? 古備前? と見紛うばかりの焼しめ陶が大量に並び始めた。筒状の、どれもが焼き味のいいものであった。これらは窯道具といって、焼くものを載せて焼成する道具である。
 「カロンです。タイの古窯、一三世紀のものです」と店主の話である。それまでは、タイの古陶ならなんでもソコタイとかスワンカーロクとか、或いは、宋胡録とか大雑把に呼ばれていて、カロンなどという名はそれまでは殆ど聞かれなかったものだ。
 窯道具は、口縁部が全てが分厚く頑丈につくられ、平たく、底には空気抜きの穴が空けられているのが普通である。大小三〇程はあったろう中から、底部に穴も空いてなく、口縁も薄手なのを見つけ出した。腰から下が分厚くて、ずしりとした感じが好ましかった。
 長い間、紹興酒にふさわしい盃はないかと探し続けてきて、思う様なのに出会わなかったのだが、以来、紹興酒を飲む為の盃として、もっぱら、このカロン盃を愛用するようになった。でっぷりと大人の如く不動で、持ち重りのするのも紹興酒むきである。
 盃には、それぞれの酒にふさわしい素材と形というのがあって、ビールはガラスでコップがいいし、例えば、木製の平盃などは日本酒以外合いそうもない。このカロン盃、それこそ、紹興酒以外には考えられなくなった。
 紹興酒に合う盃なんてそうは無いもので、焼成中に、他の器物が接触した痕すら、好ましく見えるほど気に入ってる。
 冬のあいだ呑み続けてきた日本酒も衣替えの季節で、その節目には紹興酒というのが実に合う。そう、つまみには、ニンニクを丸ごと、焦げ目の付くぐらいにカラッと揚げ、熱いうちに醤油を一寸たらしておくといい。カロン盃には、一口で飲めるだけの少量を注ぐ。そして、一呼吸おいて器の内にこごもった濃厚なる香りと共に、グイッと一気に飲み干す。
 後は、唐の詩人李白の如く怦齡t一杯復一杯揩ニ、新緑の爽やかな季節の到来に、このカロン盃を挙げるのみである。

月刊酒文化 2005年 6月

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