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名水と酒米の力を引き出す酒づくり
福井県北東部。霊峰白山をのぞみ良質な水が豊かなこの地域を、地元の人々は奥越とよび、全国に向けては奥越前と称する。奥越前は米の名産地として知られる。産する米は主としてコシヒカリと五百万石。これらの条件 は日本酒を造るものとしても恵まれたものだ。
今回は、この地を代表する酒「一本義」と「花垣」の蔵元を訪ね、奥越前の酒文化を堪能いただく。


酒米五百万石のさと
MAP 奥越前一帯は標高が200mに近く、背後に白山などの山々がせまる豪雪地帯である。近くにはスキー場も多く、田畑が一面に広がる。米作が主で、食用米はコシヒカリ、酒米は五百万石を多く産する。ちなみにコシヒカリはもともと福井で育成された品種だ。
五百万石は昭和31年に新潟県農業試験場で育成された。菊水を母に、新200号を父とする。大粒で心白(米の中心部にある白い澱粉質)が発現しやすく、純米酒や吟醸酒など高級酒に向く。酒米の代表ともいえる山田錦に比べると成熟期が早く、寒冷なところでも栽培適性がある。そのため北陸を中心に中部地方で栽培が盛んだ。
福井県の生産量はおよそ10万俵、全国でも屈指の生産量を誇る。このうちの九割が奥越前で作られており、もちろん質も高い。 一般に良質な酒米栽培の適地は次のように言われる。
ひとつは気温の日格差が大きいこと。よって良質の酒米産地には海岸地帯よりも内陸地帯の丘陵地や盆地が多い。もうひとつは粘土質の土壌で石灰やカリウムなどの塩基に富んでいること。
そして、最後に酒米づくりに熱心に取り組む篤農家たちがいること。安心して米づくりに打ち込める環境が整備されなければ、良質の酒米を得ることはできない。生産農家と買い手である清酒メーカー、両者をつなぐ第三者(農協など)が連携してリスクを応分にとり、全体をうまく機能させる仕組みがいる。
五百万石産地の頂点に立つ奥越前にはこうした条件が備わっていると言えよう。

酒造用米と酒造好適米
ひとことで酒米と言ってきたが、それは酒造用米と酒造好適米(以下好適米)に分かれる。酒造用米は、食用の米ながら酒づくりにも適性があるもので、多収穫で比較的安価な米だ。一方、酒造好適米は、酒造適性は高いものの他の用途にはあまり向かない。五百万石や山田錦に代表される。
好適米は他の米に比べて栽培に手間がかかる。粒が大きいうえに稲の背が高いので倒れやすい、成熟期が遅いものが多く台 風の被害を受けるリスクが大きい、酒づくり用の加工原料であるため食用米以上に規格の均質さが求められる、収量を多くしようと施肥料を増やすと米に蛋白質など酒づくりで嫌われる成分が多くなるなど、それはいくつもあげることができる。
それだけ手間がかかるのであるから、高値で取引されなければ作り手はいなくなる。実際、酒米の作付面積は、清酒消費の減少や生産調整政策によって、昭和五〇年代に減り続けた。それが、昭和六二年を境に増加に転じたのは吟醸酒や純米酒などの高級酒が成長し始めたからだ。
好適米が高値で安定的に取引される市場ができたのである。良質な好適米づくりは中長期的な取り組みを必要とする。明治期に灘の蔵元と生産農家との間で結ばれた村米制度はその典型だが、奥越前に限らず、今、そうした契約栽培型の取り組みが次々に生まれている。
ただし、問題がないわけではない。好適米の供給量が増える一方で、高級酒の市場の成長が鈍化し、好適米があまり始めた のである。当然、米の取引価格は下がり、ようやく軌道に乗り始めた好適米の生産システムを揺るがせている。高級酒市場の再活性化は最重要課題となっているのである。
また、世のデフレにともなう低価格化は清酒市場にも広がっており、清酒の総消費量が減る中で低価格商品が拡大している。これは、酒類全体の消費が成熟しビールやワインなど他の酒類との競合が厳しくなっていることも圧力となっており、国際価格の10倍ともいわれる国産米を使う清酒は、海外から安価な原料を調達する他の酒類との競合で不利な立ち場に立たされている。
さらに経済的な酒づくりに欠かせない酒造用米の供給にも問題が生じている。農家が、高値で取引されるコシヒカリなどのブランド米に生産をシフトする傾向が強まり、日本晴など酒造用米の確保が難しくなっているのだ。清酒酒造業を日本の農業を支える産業として、原料米確保の適切な施策が待たれるところとなっている。

精米のプロ集団大野杜氏
奥越前にはかつて大野杜氏とよばれる杜氏集団があった。多くは灘の蔵元に出向き、精米を担当した。杜氏というと酒造の管理者というイメージがもたれているが、精米機が発達するまで酒の仕込みの前段階に位置する精米は熟練の技術を要し、専門家がいたのである。それを担ったのが大野杜氏たちであった。
彼らは精米機の技術革新と普及にともなって減少し、すでに大野杜氏組合も平成一二年に解散した。
福井県の酒造りの特徴として県内のほとんどのメーカーが精米工程を外製化している点があげられる。県経済連子会社(株)パールライスに委託し、新鋭の精米機を導入し、ハイレベルな精米を実現している。
高級酒用に高精白度で心白をとらえる精米が必要になってきた今、この工程を内部化するのは中小の清酒メーカーにとって はかなり大きな負担となる。精米機が高価であることに加えて、稼動しない夏期にもピーク時に合わせた電力使用料の基本料金を負担しなければならないなど、さまざまなコストがかかる。清酒酒造業の近代化事業の一環として、精米や瓶詰め工程の外部化が進められてきたのはこうした事情による。

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