もうひとつのジュネヴァ産地ベルギー②
2026/04/27(月)
【フィラーズ(Filliers)蒸留所】

ジュネヴァから総合蒸留所へ フィラーズ(Filliers)
現在、ベルギーにはジュネヴァ製造所が25ヶ所あります(ベルギー国立ジュネヴァ博物館調べ)。ブリュッセルの西方70㎞のダインゼ市にあるフィラーズ(Filliers)蒸留所はそのひとつ、見学をお願いすると同社CEOバルト・クヌゥデさんと五代目マスターディスティラーのペドロ・ブルゴさんが迎えてくださいました。

<左>フィラーズ社の経営をリードするCEOクヌゥデさん
50年以上前にジュネヴァの樽熟を開始
何でも造れる蒸留所
<右>フィラーズ社の工場。奥の背の高い建物には連続式蒸留器がある
フィラーズ蒸留所の創業は1880年です。農業の傍ら蒸留酒をつくっていたフィラーズ家は、製造機器を整え蒸留所ビジネスを本格化させました。と言っても余剰穀物で冬場にジュネヴァをつくるスタイルで、この頃ベルギーにあった1000を超える蒸留所のひとつにすぎませんでした。二度の世界大戦に翻弄されながらも蒸留所ビジネスを継続、困難を乗り越えて再開しました。1960年頃には農業を切り離して酒造業に専念し、積極的な設備投資によって事業は大きく発展します。
1967年にスタートしたジュネヴァの樽熟成は、すでに50年以上経過しており、この原酒を使えることは大きな財産です。1970年には卵のリキュール「アドヴォカート」をヒットさせ、1986年には初のフルーツフレーバーのジュネヴァをラインナップしました。さらに2007年にはスコットランドからポットスチルを導入してモルトウイスキーの製造を開始し、総合蒸留酒メーカーとしての地位を確立します。現在は最上級のジュネヴァやベルギージン、シングルモルトウイスキーなどで構成する「プレミアム・スピリッツ」と、フルーツ・ジュネヴァやスタンダードなジュネヴァをラインナップする「ファン・スピリッツ」を自社ブランドで展開するほか、国内外からOEMを請け負ったり原酒を供給したりしています。
会社の成り立ちの説明の後、工場を案内してもらいました。レンガ造りの工場の前に建つ四本の巨大なサイロには、原料のモルト、コーン、小麦、ライ麦が蓄えられています。一度、農業を止めて酒造業に専念しましたが、近年は原料の自社栽培を再開、農家との契約栽培も拡大しているそうです。工程順に見学し、大きな縦型発酵タンクでは、発酵中の醪を試飲させてもらいました。

<上段左>屋外には4つの大きなサイロ。原料のモルト、小麦、ライ麦、コーンが貯蔵されている
<上段右>大型発酵タンクから発酵液を抜き取るブルゴ工場長。モルトワインは麦汁を採らず、ドロドロの状態で糖化、そのまま発酵に進む
<下段>発酵初日と2日目の醪を飲み比べる。2日目でアルコール度数は4~5%か。ほのかな酸味と甘みでおいしい
蒸留器はジュネヴァ用、ジン用、ポットスチル、連続式蒸留器と四種類あり、ジュネヴァに欠かせないモルトワインはもちろん、ニュートラルスピリッツまで製造できます。
EUの規定でジュネヴァは、単式蒸留器でつくられるモルトワインの割合によって、大きく三つに分けられています。オウド(古い)ジュネヴァはモルトワインを15%以上含むもの、ヤング(新しい)ジュネヴァはモルトワインが15%未満のもの、そしてグレーン・ジュネヴァは穀物だけを原料に連続式蒸留器で蒸留したものです。

<上段左>高さ10mを超える連続式蒸留器。ニュートラルスピリッツを製造できるので製品開発の幅が大きく広がる
<上段右>ジュネヴァ用の単式蒸留器は2基ありモルトワインを得る
<下段左>ジン用の蒸留器。1928年に3代目が開発した初のベルギージンのレシピを元に造った「Filliers Dry Gin28」にはこの蒸溜器を使う
<下段右>フォーサイス社製のポットスチルを導入し2007年からシングルモルトウイスキーの製造をスタート
そして圧巻の貯蔵庫にはバーボン樽に詰められたジュネヴァが、5~6段の貯蔵ラックにびっしりと並んでいます。すべてバーボン樽で熟成するためバニラ様の甘い香りが支配的です。一方、隣接するウイスキーの貯蔵庫はラックを使わない4段積みで、バーボン樽のほか複数のシェリー樽が使われています。貯酒量は増え続けているそうですが、ヌクゥデさんは「広い土地があるから立体型のセラーにはしない」と言います。

<上段左>バーボン樽で長期熟成したジュネヴァを汲みだすブルゴ工場長
<上段右>ジュネヴァはバーボン樽で熟成。6段式の貯蔵ラックにたくさんの樽が積まれていた
<下段左>モルトウイスキーはシェリー樽で熟成。昔ながらの積み方だ
<下段右>フィラーズ社のプレミアムジン「「Filliers Dry Gin28」
今、フィラーズ社は海外市場に目を向けています。そのためにプレミアム商品を充実させ、「ジュネヴァ」「クラフトジン」「シングルモルトウイスキー」をグローバルマーケットに投入しつつあります。日本でフィラーズを楽しめるようになる日も近いのではないでしょうか。